「アップルシード」

 以前に紹介させてもらった橋本 紡 著「空色ヒッチハイカー」にこんな一節があります。
「この世の中にはもちろん面白い映画がたくさんある。素晴らしい映画がたくさんある。泣ける映画がたくさんある。そして、その百倍くらいの数の、下らない映画だってある。
 だけど本当に特別な映画は滅多に無い。」
この「映画」を「マンガ」に置き換えれば、私にはそれはこの「アップルシード」だと思います。
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■出版社
青心社
■著者
士郎 正宗
 「空色ヒッチハイカー」では中学生と小学生の兄弟がその「特別な – くだらないがとても大事な – 映画」にでてくる台詞を言いまわして遊ぶシーンが出てきます。例えば、
「お前のシャーペンはどうしたんだよ?」
 例えば、僕がお兄ちゃんのシャーペンを勝手に使ってると、お兄ちゃんがそんなことを言う。元ネタはフィル(登場人物の一人)の台詞で、本当はシャーペンじゃなくて車だった。
 What about your car?
(おまえの車はどうしたんだよ?)
 僕はもちろん、こう答える。
「ジュースに変わったんだよ」
 これはガードナーの台詞だ。
 You’re drinkin’ it!
(酒に変わったんだよ)
 まるでその二人だけの共通言語のように成立することば遊びを、高校生の時この「アップルシード」で当時のマンガ好き . アニメ好きの友人たちと繰り広げていました。いや、オタクですね、本当に。ちなみに元ネタの数々は、
「力に頼るなら勝った時だけ喋りなさい… こんな鎧なんか着るから…」
「知識や技術は使う為にある…。その功罪を問うのはおまえたちではない。憶えておけ」
「広義に考えれば全ての人材は要人なわけだし」
「真実は最高の武器 正直は最良の戦術 というわけよ」
「問題は理想世界は理想人の集合でないと成り立たないという事だ… 社会はヒトをつくりヒトは集まり社会となる 普通の人間では普通の社会しかできん… 体制だけよくてもギャップができるだけじゃ…」
「デュナンはさ 幸せって何だと思う」「私よ 私の事」「?????」
「生きるべきか死ぬべきか… ヒトが決めるべき問題なのに…」
「データ不足ならそれはそれで答えになる」
「答えが出るのを待ってる程暇じゃない 貴様自身が決める事だ」
 たまに読み返したりするのですが、今でも憶えている科白がいっぱいちりばめられています。ホント、何度も何度も繰り返し読みましたから。一言一句 . 一コマ一コマをこれほど深読みした作品はなかったですね。一冊読み切るとぐったりしてしまいます。私にとっては滅多にない「特別なマンガ」なのです。

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