「うさぎドロップ」

 この作品の中で「俺は 母親はもちろん 父親にも夫にもなったことないからなァ」という科白が出てきます。なんか大好きです、この言葉。
 30歳になる彼「大吉」(独身)は身寄りのない6歳の彼女「りん」をやむなく引き取り、育てることになる。二人の関係はとてもクールな距離を保ちながら、淡々と二人だけの毎日が進んでいきます。 なかなか自分の感情を表にだそうとしないりんを大吉は甘やかすわけでもなく無骨な言葉づかいで諭すようにゆっくりと話しかけていきます。そんな毎日を二人でのりこえていくうちに、自称子どもギライの大吉は、りんの事ならなんとなくなにを考えているのかが分かるようになっていく。りんは、大吉のことを誰よりも信頼するようになり、ダイキチになら(りんは大吉のことをダイキチと呼ぶ)自分の感情を自分なりに表現しようとするようになる。りんはダイキチという人が自分の父親でもなければ兄でもない存在としては認識している。でもそんなことはどうでもよくって、「ダイキチ」が信頼できる存在であることがりんを安心させ、どんどんと – いろんなものを – 成長させていく原動力になっていくのだ。
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■出版社
祥伝社
■著者
宇仁田 ゆみ
■内容(amazonより)
 案外、この世界も悪いもんじゃないって
 りん、君はしっているかい?
 祖父の隠し子・りんを育てることになったダイキチ
 6歳児と30男が繰り広げる、なごみ系ちぐはぐLIFE
 結婚する事が決まった妹から – かなり屈折した言い方で – 自分は子どもとやってく自信がないと相談される。それに対して兄である大吉が「なんとかなるんじゃねーの? その気になれば。なんとかするしかないっつーか…」「ったく ひとごとよねー お兄ちゃんは」この会話のあとに「俺は 母親はもちろん 父親にも夫にもなったことないからなァ」という科白が出てきます。子どもを育てるってのは、立場や役割がそうだからすることなんじゃない、っていいたかったのかな? なんて思ってしまいました。でも大吉ならそんなリクツっぽいことを言いたくていったんじゃないんだろうな。本当にそう思ったから、ストレートにしか表現できない人だから口にだしたんだろうな。いやこの人、男前なんです、ホント。

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