「ハニー ビター ハニー」

 この作品に登場する女性は、なんでこんな男性にこんなことされてるのに、好きでいつづけるのだろうか。こんな、とは浮気または二股のことだ。一昔みたいにどんな役立たずの男でも「気に入らなければ出て行け」と言えた時代なら、というかそっちなら私にもまだ分かる。逆に盲目的になってしまって(それは罪悪感から?)周りが観えなくなっていれば仕方がないとも思う。でもこの作品に登場する女性達は、結構クールに男性との間の距離を取りながら – というか取ってるのに – 浮気をされたりバレバレの嘘をつかれるとそれを無防備にダイレクトに受け止めようとするのだ? 読んでるこっちが痛いっつーの! 私は男性なのでそこいらへんがよく分かっていないと思いますが、でもあえて言わせてほしい、どうしてとっとと三行半を叩きつけてやらないのか。私は「飲む打つ買う」つまり酒乱・賭博・浮気は男の三悪だと母から教わりました。そんな男をなんとかしてあげたいなんて仏心を出すより、全力で別れなさいと言われました。絶対治りませんから!
 そんなことあなたに言われなくたって分かってんのよ!!!
 そんな叫びが聞こえてくるみたいです。もちろんそんなストレートな表現は出てきませんが、そこかしこからにじみ出てくるようです。こういうのを切ないって言うんだろうな、なんて思ってしまいました(←やっぱり分かってないっぽい感想だな…)。
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■出版社
集英社
■著者
加藤 千恵
■内容(カバーより)
 陽ちゃんは親友の沙耶香の彼氏だ。でもわたしは彼と寝ている。沙耶香のことは大切だけれど、彼に惹かれる自分を止められない— (「友だちの彼」)。ライブでボーカルの男性に一目惚れし、誘われるままホテルへ。初体験。…あたしは本当にこういうことがしたかったの? (「もどれない」) 甘やかで、ほろ苦く、胸のちぎれるような切なさをたたえた全9話。人気歌人初の恋愛小説が文庫オリジナルで登場。
 あと著者は歌人とのこと。言葉を選んでいくセンスが鋭いな、とは読んでいても思いました。なんでもないように並んでいく言葉は – 歌うかのように . 彫り込んでいくかのように – ハッキリとした輪郭を持って連なっていくようです。印象としては、細かく削りだされたガラスのパーツを万華鏡のように組み合わせた透明な一枚のステンドグラス作品をみているような気分にさせてくれました。こういう文章の書き方は憧れてしまいますね。
 ところで、なんで母から「男の三悪」なんてこと、私は教わったんだろうか? あんまり考えたくないな…

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