閑話雑録:箱膳(定食の原型)

店頭営業係 小林

■今回はすごく昔のモノの話をしようと思う。きっかけはいつもの空部屋で発見した「箱膳」だ。丁度粗大ゴミの日のお手伝いをしていたときだったので、Kさんにこれはどうしたんですか?と聞いた。あら懐かしいねえ、と言ってくれたが実際に使っていた物ではないそうだ。使い込んだ感じもないので、お土産で買ったかもらい物ですか?と聞いても記憶にないという。それよりあなたはこれが何か知っているのかと聞かれた。知っているのなら使ってもいいよとのこと。たまたま私は雑誌で読んだ事があったのでそれが何かを知っていたので使わせてもらうことにした。

■昭和初期に「ちゃぶ台」が登場するまで食事をするときに使うお膳として活躍していた「箱膳」と呼ばれるもので、江戸時代から日常的に使われていたモノだ。子供にとっては自分用の箱膳が与えられることは一人前になった証でもあったらしい。

■一汁三菜というスタイルが定番となったのも江戸時代のこと。汁は汁物・三菜はおかずが二~三種類という意味。あとはご飯と漬物がついて完成である。ちなみに漬物は必ずついてくるものだったので三菜には数えられず、季節の野菜でつくられた漬物は「香のもの」といわれたそうだ。粋じゃないですか。汁物は「箸がたつ」くらい野菜が入った具だくさんだったらしい。

■ちなみにこの箱膳で食事をすると分かるが、畳の上に置かれた箱膳で食事をすると食器を持たないと食べにくいことが分かる。なので世界的に見てもめずらしく食器を持って食べる民族に私たちはなったらしい。でもそのおかげで日本の食器は軽く持ちやすく美しく進化したとも言われる。あと、ご飯が左手前に配膳される理由もここから来ているとのこと(手を伸ばして一番取りやすい場所だから)。

■では、せっかくなので実際に使ってみようかと近くのコンビニに買い出しに行く。おいおいコンビニかよ、と思われるだろうが、江戸時代の独身男性はご飯は炊いてもおかずは「煮売屋」と呼ばれる総菜屋で買っていたことが多かったらしい。土佐ではどうだったのか、江戸では武家社会ということもあって男性比率が高かったらしいので、今で言う中食スタイルが主流だったとのこと。

■ということで、近くの大手コンビニを回って物色していく。さてどんなおかずが似合うのか想像してみる。今回はファミリーマートで全部揃えることにした。さてさて、帰ったらまずはご飯を炊かねばなるまい。あ、でもその間に一杯やりながらおかずをちょこっとずつ摘んでいくのもいいかもしれない。そしたらしめはお茶漬けにしようか。なんか発想が飲ん兵衛ですいません。

■今回の箱膳について参考にした書籍について

・雑誌名:季刊 うかたま – 食べることは暮らすこと – 2014 vol.34

・発行所:一般社団法人 農山漁村文化協会

■今回改めて箱膳について調べてみたら、ほんと情報が少なくて困っていた。たまたま以前読んだこの雑誌が手元にまだあって、今回の内容はこの雑誌を元に幾つか加筆して書かせていただいた。この号では「ニッポンの定食」と銘打って「街の定食」「港の定食」「市場の朝めし」「ご当地定食」「定食屋さんの小さいおかず」とそれぞれを特集している。今見てもストーリーが感じられる写真が並び、なによりキラキラと実に美味しそうなおかず達とヒトの笑顔が見られるのだ。残念ながらここではお見せできないので、出典だけでも記載したいと思う。

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